12月25日、大阪府当局は8月に公表した「組織・人事給与制度の今後の方向性(素案)」の成案化に向けた給与制度等について改正を行うとし、府職労に提案・提示しました。
今回の「組織・人事給与制度の今後の方向性」の前提とされている職員の年齢構成のいびつさ、職員のモチベーションの低下など、今日起きている問題は、この間の大阪府当局による職場実態を軽視した短絡的な人事・給与施策がもたらした結果です。具体的には、20年以上に及ぶ職員削減(採用の抑制)、給与制度改革(2018年)、相対評価制度の導入、職員基本条例や労使関係条例などによるトップダウン体制の強行などです。
府職労は、機会あるたびに「このままでは十分な職員育成ができない」「専門性が継承できない」「職場の風通しが悪くなる」「チームワークが損なわれる」との指摘を繰り返してきました。しかし、これらの指摘に耳を貸さず、府職労の反対を押し切って強引に進めてきた結果が今日の状況を生み出しています。
今回の提案・提示に対し、府職労はこれまでの要求を反映し実現したものは評価しつつ、職場からの意見集約を行い、問題点を明らかにし、折衝・交渉を進めます。
提案勝ち取った成果
通勤手当に係る子育て中職員の認定基準緩和
未就学時の子どもを持つ職員について「届出経路」と「認定基準による経路」が異なる場合において、通勤の負担軽減を図るため、認定基準を緩和する。
見直し内容
現行 「最安経路」と比較し、「所要時間が10分以上短縮かつ所要額が2割増の範囲」
見直し後 「最安経路」と比較し、「時間短縮(※)又は乗換回数減等かつ所要額が2倍増の範囲」
※時間短縮についてはジョルダン検索結果による「乗車時間(乗換待ち時間含む)」で判定
実施時期
令和6年4月1日
府職労の意見
これまでの長年の要求が一歩前進!全職員を対象に緩和すべき!
提案
主査級昇任時における給料上のインセンティブの拡充
①行政職給料表3級(主査級)の初号給水準引上げ
行政職給料表3級(主査級)の初号給から12号給について現在の13号給水準に見直す。
②行政職給料表3級(主査級)昇格時の昇給幅拡大
主査級昇任考査の対象年齢層等の職員について、主査級昇任時の昇給幅を1号給引上げ
※行政職給料表に準じて技能労務職給料表の3級(主査級)についても同様の措置
実施時期
令和6年4月1日
給与制度見直しに係る影響
※モデル①~②共通 人事評価結果は「第3区分」の場合
府職労の意見
主査級の給料引上げは反対しないが、影響があるのは概ね40歳以下に限定されているのは問題!いまの大阪府に必要なのは、職場で若手職員の育成や仕事で中心を担うベテラン・中堅職員のモチベーション向上であり、その層の給料水準引上げこそ行うべき!
提案
課長補佐級昇任時における昇給幅の縮小
国家公務員との給料水準の不均衡を是正するため、課長補佐級昇任時の昇給幅が大きい格付け先について昇給幅を1~2号給引き下げる。
実施時期
令和6年4月1日
給与制度見直しに係る影響
提案
主査級職員のグループ長登用時における給与上の改善措置
主査級職員をマネジメントを担うグループ長に登用した場合、当該職員の給料の号給に2号給の加算措置。
実施時期
令和6年4月1日
府職労の意見
グループ長に登用するのであれば、課長補佐級に任用すべき!2号給加算では少なすぎる!
提案
営利企業への従事等の制限に係る許可
地方公務員法及び府人事委員会規則の趣旨を踏まえ、許可できる範囲や基準を明確化し、職員が安心して兼業できる環境を整備する。
申請が想定される業務例
行政嘱託員、部活指導員、塾講師、地域活動やOB会等の役員、コンビニ等の販売員、 飲食業のスタッフ、司会業、モデル・タレント業、新聞・牛乳配達、農林水産業、土木業、自作販売(アクセサリー、アート作品、アプリ開発)など
許可基準の明確化
ⓐ原則として、年次休暇取得を前提としていないこと(時季変更権を行使する場合があるなど職務遂行への支障があることを考慮)
ⓑ副業時間は週8時間以内又は1か月30時間以内、また勤務時間が割り振られた日において1日3時間以内の範囲を超えないこと(副業による疲労のため職務遂行上その能率に悪影響がある可能性を考慮)
ⓒ原則として、副業する事業の責任者とならないこと(副業による疲労のため職務遂行上その能率に悪影響がある可能性を考慮)
ⓓ報酬が社会通念上相当と認められる程度を超えないこと(信用失墜の観点を考慮)
実施時期
令和6年4月1日
府職労の意見
「全体の奉仕者(憲法第15条)」として働くのが自治体労働者。安易な副業の拡大は公務を歪めることにもつながりかねません!副業しなくても安心して職務に専念できる賃金・労働条件の確立こそ必要です!
提案勝ち取った成果
一般職非常勤職員への勤勉手当の導入
支給対象者
基準日に在職する一般職非常勤職員(基準日前1ケ月以内に退職し、又は死亡した一般職非常勤職員を含む)の内、任用期間が6月以上である職員(勤務時間が1週当たり15時間30分未満の者を除く)
基準日・支給日
常勤職員と同じ
勤勉手当額
勤勉手当基礎額に、常勤職員に準じ、勤務成績に応じた月数を乗じて得た額とする。勤勉手当基礎額は、それぞれその基準日前6ケ月において一般職非常勤職員として任用された期間の勤務について支給された報酬の合計額を6月で除した額とする。
実施時期
令和6年4月1日(令和6年6月期から適用)
勤勉手当の計算方法
基礎額×勤勉手当支給率(常勤職員に準じた月数)=勤勉手当
勤勉手当支給率は人事評価結果にもとづき表のとおり。
提案勝ち取った成果
一般職非常勤職員の報酬単価改定
人事委員会勧告を踏まえ、令和5年4月1日に遡って常勤職員の給料表が引上げられたことに伴い、会計年度任用職員の報酬について、常勤職員に準じて改定。
実施時期
実施時期 令和5年4月1日(遡及適用)
府職労の意見
報酬単価が引上げられたが依然として水準が低い!専門職種では近隣市町村や民間企業よりも低水準であり、人の確保も困難となっている実態がある!大幅な引上げを求める!
提示勝ち取った成果
職員の再採用(離職者を対象とした「ウェルカムバック採用」)
職種
現在、一般行政部門において採用を実施している全ての職種を想定
年齢要件
受験年度末時点において、定年年齢未満であること(令和6年度実施においては、60歳以下)
退職事由を限定しない
(ただし、分限免職、懲戒免職、定年退職等による離職を除く)
職階
退職時と同一又は下位の職階
給与
離職時の号給から離職期間を経歴加算し、再採用時の給与号給を決定
選考時期
通年を予定
入庁時期
次年度の4月1日採用を基本(欠員状況等に応じて年途採用も可とする)
初任給決定の方法(提案)
他の職員との均衡を踏まえ、離職時の職務の級及び号給を基礎に、離職後の経歴を加算して決定
提示
人事評価制度の改正
①相対評価の改正
・全職員を対象とした相対評価は継続
・相対評価を5区分から6区分に改め、分布割合も変更
・相対評価においては、概ね3年を目途に、制度の運用の検証を行い、必要があると認めるときは、制度の見直しを行うことを規定
②絶対評価の改正
よりきめ細かく評価を実施するため、絶対評価(総合評価)も5段階から6段階に変更
③給与反映の改正
府職労の意見
相対評価は中止すべき!少なくとも4区分と5区分の分布割合はなくすべき!絶対評価で「良好」の評価を受けた職員がペナルティを与えられるような制度は大きな問題がある!
提示
部長級の給料月額の見直し
部局長等の給料 月額5,000円増額
理事の給料 月額5,000円減額
〔現行〕 | 569,700円 |
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〔見直し後〕 | |
管理職手当区分「一種」の職 | |
574,700円(+5,000円) | |
管理職手当区分「二種」及び「三種」の職 | |
569,700円(現行水準) | |
管理職手当区分「四種」の職 | |
564,700円(▲5,000円) |
提示
退職手当にかかる公務員歴の通算の廃止について
他の自治体等の公務員歴がある職員の退職手当の算定に当たっては、その基礎となる勤続期間に当該公務員歴を加算しない。ただし、任命権者の求め等により府の職員に採用された場合(例:国からの割愛派遣、副市長からの復職等)は除く。 例① 令和7年3月31日に他府県等を退職し、翌日、府に採用:他府県等の公務員歴は通算されない。(他府県等の退職時に退職手当を受給) 例② 令和7年3月31日に府を退職し、翌日、他府県等の公務員として採用:令和7年4月1日より府の通算規定が廃止されることから、他府県等において府の公務員歴は通算されない。(府の退職時に退職手当を受給)
提示
主査級昇任考査制度の改正
受験対象年齢
31歳~44歳を29歳~40歳に引き下げ
類区分の廃止、年齢区分による考査を実施
現行の考査の区分(第1類考査、第2類考査)を廃止、合格者の年齢構成バランス確保のため年齢区分(29歳~34歳、35歳~40歳)を設定
考査科目の統一
受験対象年齢の引下げに伴う経過措置
受験回数が減少する職員は現行の上限年齢である44歳を限度に令和6年度から8年度の3年間は受験可能
行政(社会人等35~49)区分採用者の特例受験制度
主査級昇任考査の受験上限年齢を超えて入庁した職員は入庁2年目から4年目までの間に最大3回受験可能
職種変更者の特例受験制度
(詳細省略)
外部資格保有者の筆記考査(行政専門)の免除
(詳細省略)
府職労の意見
主査級昇任考査の受験者が少ないのは、受験方法だけの問題ではない!職員数が少ないもと、長時間労働がまん延し、主査級職員に過重な責任や負担を担わせていることも問題となっている!人を増やし、安心して働き続けられる職員体制こそが必要!