「組織・人事給与制度の今後の方向性(素案)」に対する府職労の考え方
8月21日、人事局は「組織・人事給与制度の今後の方向性(素案)」を公表しました。
これは、府民ニーズの増大が見込まれる中、スピード感を持って的確に対応するために、職員がスキルアップし、能力を最大限に発揮できるよう組織全体の生産性を向上させることが必要とし、今後10年を見据えた「組織・人事給与制度の今後の方向性」を策定するというものです。
「組織・人事給与制度の今後の方向性(素案)」は、こちらからご覧ください▼
これに対し、府職労は以下のとおり、基本的な考え方を表明します。
これまでの反省のうえに立った組織・人事給与制度を
今回の「組織・人事給与制度の今後の方向性」の前提とされている職員の年齢構成のいびつさ、職員のモチベーションの低下など、今日起きている問題は、この間の大阪府当局による職場実態を軽視した短絡的な人事・給与施策がもたらした結果です。
具体的には、20年以上に及ぶ職員削減(採用の抑制)、給与制度改革(2018年)、相対評価制度の導入、職員基本条例や労使関係条例などによるトップダウン体制の強行などです。
府職労は、機会あるたびに「このままでは十分な職員育成ができない」「専門性が継承できない」「職場の風通しが悪くなる」「チームワークが損なわれる」との指摘を繰り返してきました。しかし、これらの指摘に耳を貸さず、府職労の反対を押し切って強引に進めてきた結果が今日の状況を生み出しています。
「組織・人事給与制度の今後の方向性(素案)」を考える前提として、まずはこれまでの反省のうえに立って、今後の方向性を検討すべきです。
真に全ての職員が能力を発揮し、活躍できる組織に
今回の「組織・人事給与制度の今後の方向性(素案)」は、基本理念として「若手からベテランまで、全ての職員が能力を最大限に発揮し、活躍できる大阪府庁へ」「組織として最高のパフォーマンスを発揮できる大阪府庁へ」と掲げています。
この基本理念を達成するために、いま大阪府がすべきことは大きく3つあると考えます。
1.まずやるべきは業務量に見合った職員増と長時間労働の解消
この間、マイナスシーリングをかけて減らし続けた職員数を元に戻し、将来を見据えた職員育成を前提にした計画的な職員採用を行うべきです。時間外勤務縮減のためのさまざまな取り組みを進める一方で、時間外勤務は増加の一途をたどっています。精神疾患により休職する職員も増加傾向です。「組織として最高のパフォーマンス」を発揮するためには、何よりも職員が休憩や休暇を十分に取得し、余裕を持って働くことのできる環境、職員を育成し、専門性を継承できる職場をつくることが必要不可欠です。
2.全ての職員の大幅賃上げと処遇改善を
この間の給与制度改革や賃金カット・抑制によって、職員の賃金は大幅に削減・抑制され続けてきました。また、昨今は初任給や若手職員の賃上げはあったものの、ベテラン職員の引上げはほとんどなく、昇給も極めて少ない制度となっています。再任用職員についても「任用」を理由に国や他府県に比べてもかなり低い水準となっています。
職場では中堅・ベテラン職員が少ないため、責任や役割が大きくなっているにもかかわらず、低い処遇のままというのが実態です。これではモチベーションは低下するばかりであり、「能力を最大限に発揮」することはできません。若手からベテランまで全ての職員の大幅な賃上げと処遇改善が必要不可欠です。
3.信頼関係を壊す相対評価はきっぱり中止すべき
相対評価が導入され10年が経過しましたが、人事課が毎年繰り返し行っている「検証」でも、制度目的である「執務意欲の向上」につながっていないことは明らかになっています。そればかりか、職員のモチベーションを低下させ、職員どうしの信頼関係やチームワークを悪化させている実態もあります。こうした問題を引き起こしているのは、下位評価(標準未満)の評価結果の分布割合を固定化していることが大きな要因の一つです。
また、評価制度による「職場チャレンジシート」「チャレンジシート(自己申告票)」の作成等の負担も多く、評価制度のために「形式的にしなければならない」業務を増やしているという実態もあります。
「全ての職員が能力を最大限に発揮」し、「組織として最高のパフォーマンスを発揮」するためにも、直ちに相対評価を中止し、評価制度のあり方について見直すべきです。
自由に意見を言い合える職場環境に
「組織・人事給与制度の今後の方向性(素案)」は、「めざす組織像」として、まず「①オープンでチャレンジングな組織」として、「これまでの良き伝統である、年齢や性別、職階、学歴等にとらわれず、自由闊達に意見を言い合える風土を継承・発展させ、職員がやりがいや充実感を持って、新たなことにも失敗をおそれず挑戦できる組織」を掲げています。
しかし、「これまでの良き伝統」である「自由闊達に意見を言い合える風土」を壊し続けてきたのが、この十数年の大阪府ではないでしょうか。職員の「失敗」を必要以上に吊るし上げ、「知事や上司の顔色を見て仕事をしろ」というメッセージを発し、職員基本条例によって職務命令を絶対化し、相対評価で無理やり下位評価職員を作り出し、失敗をおそれ、チャレンジもできず、やりがいを持てない組織に変質させたのが今の大阪府です。
従来の大阪府は、ほとんどの職員が労働組合に加入し、職員の労働条件にとどまらず、府民の声に耳を傾けることを大切にし、あらゆる問題について職場でよく話し合い、職員間の協力体制や風通しのよい職場をつくってきました。しかし、公務員バッシングを意図的につくり出し、職員基本条例や労使関係条例といった職員の耳や口をふさぎ、上司の指示にのみ従順な職員へと変質させる条例まで制定しました。また、職員を削減するために、多くの業務を民間委託、マニュアル化し、職員採用を抑制し、中堅・ベテラン職員が少なくなるもとで、必要な専門性が十分に継承できなくなっているのが実態です。
府民の暮らし、中小企業を支える施策の重視を
「めざす組織像」の2つめは、「②連携・協働し、より良い大阪を実現する組織」として、「大阪・関西万博、国際金融都市やカーボンニュートラル実現に向けた取組み等、自治体や企業等の多様な主体と連携・協働し、『オール大阪』で更なる大阪の成長に貢献できる組織」を掲げています。
「大阪の成長に貢献」に一番必要なのは、府民の命や健康を守り、暮らしを支えることです。そして、府内の99・6%を占める中小企業への支援を強めることです。大阪・関西万博や国際金融都市など、関西財界や大企業の利益優先の府政ではなく、府民の生活や中小企業重視の府政が求められています。
そのためにも、都道府県である大阪府、政令市である大阪市、堺市をはじめ、各市町村が自立し、それぞれの役割を果たすことが求められています。
「余裕」のある職場、 災害時にも対応できる組織体制を
「めざす組織像」の3つめは、「③柔軟かつ機動的な組織」として、「副首都化をはじめとする大阪特有の課題に対し、共同設置組織やPTの活用等、従来の組織の枠組みにとらわれることなく柔軟に対応するとともに、ライン職における責任の明確化や意思決定の迅速化等により機動的に対応できる組織」を掲げています。
「柔軟で機動的な組織」は言い換えれば「少ない人数であらゆることに対応しなければならない組織」ということではないでしょうか。私たち自治体で働く職員は、コロナのような新型感染症が発生したり、大地震や風水害などの災害が発生したときは、府民の命や暮らしを守るため最前線で仕事をしなければなりません。限られた人数の余裕のない「柔軟で機動的な組織」では、十分な対応ができないのは明らかで、職員の過重労働、長時間労働が深刻化するばかりです。
これまでの職員削減や民間委託推進をあらため、災害時にも対応できる職員体制、余裕のある職場を構築することが必要です。
みなさんのご意見もお寄せください
府職労は職員がやりがいを持って府民のために仕事のできる職場をめざしています。そのためには職員が安心して働き続けることのできる職場環境が必要です。
「組織・人事給与制度の今後の方向性(素案)」に対するみなさんのご意見を引き続き募集しています。