府当局は6月30日に「大阪府財政構造改革プラン《たたき台》」を公表しました。給与制度の見直しなど、給与労働条件に関わる重大事項にも言及しているにも関わらず、労使協議も行わず、府民に公表することは、事実上、労使協議を否定するものです。府職労は当局に断固抗議し、十分な協議を求めるとともに「大阪府財政構造改革プラン」に反対し、職場からの意見集約を行い、幅広い府民団体や府民との共同を広げ、運動を強化するものです。
府民・職員の生活支えてこそ大阪経済活性化に
「たたき台」では、「財政構造改革の必要性」について、長年にわたり行政改革に取り組んできたが、雇用・経済状況が厳しく、今後とも歳入の伸びが期待できないとし、「財政再建プログラム(案)」の後継プランとして『歳入歳出改革』『国への制度提言』『公務員制度改革』を改革の柱とし、自律的な財政構造の実現、歳出歳入や公務員制度など自らの改革、地方財政や社会保障などについて国に提言を行い、改革を迫るとしています。
この間の賃金抑制や人員削減、府民施策の切捨てなどによって、府民・職員の生活は悪化の一途をたどっています。当局自らも認めているように大阪の雇用・経済状況の悪化は、全国的に見ても最悪の状態となっています。この間、府職労は「府民の生活や営業を支える府政にすべき」と一貫して要求し続けてきました。職員の賃金抑制を直ちに中止し、府民の生活や営業を応援する施策を充実させてこそ、府民の消費購買力が高まり、経済活性化へとつながるのであり、そのための「改革」こそが必要です。
大阪府解体めざす「基本的考え方」
「基本的考え方」では、①国との役割分担②市町村との役割分担③民間との役割分担④持続可能性の確保⑤経営の視点、マネジメントの重視の5点を「改革の視点」とし「市町村への権限委譲」「民間委託の推進」「民間の経営手法等の取り入れ」などを挙げています。
また「計画期間」については、平成23年度から25年度までの3年間とし、改革効果額として、平成23年度125億円、平成24年度165億円、平成25年度185億円を見込んでいます。しかし、今年4月に発表された「今後の財政収支の見通し(粗い試算)」では「収入の範囲内で予算を組み、実質公債費比率を早期健全化基準(25%)以上にしないためには、『財政構造改革プラン』の取組期間(23〜25年度)中、毎年、要対応額が960〜1130億円」必要としており、今回示された「改革効果額」とは大きな差があります。今後、この差を解消するために、人件費抑制やさらなる府民施策の切捨てが強行されることも危惧されます。
イルミネーション継続 小中学生も入場料有料化
「歳出改革」として、市町村振興補助金、私学助成、大阪府育英会助成費、福祉医療費助成制度、中小企業向け制度融資、公営(公共)住宅の行政投資のあり方などを主要分析事業に挙げ、見直しの方向を示しています。また、400事業の評価・点検を行ったとし、障がい者福祉施設機能強化推進事業、千里救命救急センター支援事業など8事業について廃止、病院事業費、ドクターヘリ運営事業、大気汚染・ダイオキシン類等常時監視等の41事業を見直す一方で、箕面森町や御堂筋イルミネーションについては継続の方向性を示しています。
「歳入確保」としては「府有財産の活用と売却」「基金の活用」「債権管理の強化対策」を挙げ、使用料・手数料についても「原則としてフルコスト(資産の価値や直接的な経費のほか、人件費、維持管理費など)で積算した使用料・手数料を徴収する」とし、小中学生の入場料が無料の施設の有料化まで検討するとしています。
また、債権回収の民間委託も検討されており、府民の生活状況を省みない「債権回収」が横行する恐れもあります。自動車税、府民税などの府税の超過課税も検討するとしており、府民の消費をさらに冷え込ませることになります。
さらに、出資法人等、公の施設のさらなる見直しも掲げ、府民牧場、健康科学センターなど4施設について廃止、子どもライフサポートセンター、障がい者交流促進センター、昆虫館(箕面公園)、都市緑化植物園(服部緑地)、府営公園のプールなど11施設を「抜本的なあり方検討」としています。
財界・大企業支援のプランではなく、府民のためのプランを
今回示された「改革」は、巨大開発については「聖域化」し、府民に「サービス水準低下」か「負担増」かの2者択一を迫り、財政難を乗り切ろうとするものです。
さらには「国への制度提言」として、社会保障関連に係る府の負担を削減するために、国に制度変更を求めるとともに、他の都道府県と比べて余分な持ち出しをしていれば廃止・引き下げを検討することも明確にしており、自治体本来の役割を放棄するものです。
橋下知事は、この間の記者会見でも「(関空の)高速アクセス鉄道に1兆円の投資をしても十分回収できる」「(法人税実効税率引き下げについて)今までの実効税率が高すぎた」などと発言し、大企業支援と巨大開発推進の姿勢を鮮明にしています。
「大阪府財政構造改革プラン」は、府の役割を「競争による成長戦略」「広域的な課題」のみに限定し、「住民の福祉の増進を図ることを基本」(地方自治法)とすべき地方自治体の役割を大企業支援と巨大開発へと変質させ、橋下知事の政治的野望を実現させるためのものと言わざるを得ません。
独自給料表・「現給保障」解消・定額制導入に言及
「公務員制度改革」の目的では、「がんばった職員が報われ、やる気を引き出す」「府民の理解と支持を得る」「多様な人材の登用を通じ、価値観の衝突によるエネルギーを引き出す」を掲げ、「現行制度の課題」として「国以上の格付け(わたり)や一律的な昇格」「現給保障等により、制度上の給与と現実の給与が異なる」などとして、①独自給料表の導入(職務・職責に応じた定額制導入、「わたり」や一律的な昇格解消、現給保障の段階的解消、現業職員への技能労務職給料表(仮称)適用などの検討)②管理職手当(職務に応じた間差の拡大)を示しています。
しかし、そもそも今回当局が「課題」としてあげた事項は、いずれも06年の給与構造改悪時に今回の「目的」と同じ理由で当局自らが提案した制度であり、給与水準を引き下げるために全国にも例を見ない「2級落とし」や評価制度の賃金リンクを強行しました。その引き下げた給与水準さえ、独自カットの継続・拡大により一度たりともまともに支払われたことはありません。
評価制度は毎年複雑化・不透明化し、「がんばった職員が報われる」どころか圧倒的多数の職員が納得できないまま「寛大化」を理由に評価を下げられており、賃金抑制のための制度であることは一層明らかになっています。
こうした中でも全職員が自らの職務に全力をあげているのであり、「やる気を引き出す」などと現在「やる気がない」かのような文言を並べる前に、まず約束した給料を支払うことこそ使用者としての責任です。
さらに、「現給保障」などと意図的に府民の誤解をあおりながらその「解消」を掲げていますが、実態は「昇給停止」の上にカットが重なり、現給など保障されていません。この経過措置は、人事院でさえほとんどの民間企業が給与カット時に経過措置を設けているとして、府人事委員会もその必要を勧告したものです。
また、今回の「たたき台」には、職員の生活保障の観点は一切入っていません。すでに人事委員会が自らの役割を放棄して、水準引き下げを前提とした独自給料表作成などの「調査・研究報告」を行っていることからも、ここに示された方向性が職員の生活を無視してさらなる給与水準の引き下げを狙うものであることは明らかです。
当局は具体的内容を一切示していませんが、府職労は労使協議も行わず、勤務労働条件の大改悪の方向性を一方的に公表したことに断固として抗議するとともに、その撤回を求めるものです。
知事のトップダウン府庁づくりの任用制度に
任用制度については、①本庁部長の任用(知事と価値観を共有し、各部局の政策推進とマネジメントの要となる職にふさわしい任用制度とするため、庁内外を問わず人材登用できる仕組みの検討)②課長級昇任の見える化(課長級昇任考査を導入し、マネジメント能力を重視した任用)③採用試験の見直し(地域主権の進展を見据えた人材確保を行うため、組織として求める人物像を明らかにした上で、募集の時期や方法、採用試験内容等の見直し)を挙げています。
しかし「目的」では「価値観の衝突によるエネルギーを引き出す」などとしながら、本庁部長は「知事と価値観を共有し」課長級はそのための「マネジメント能力」で任用、採用でも「求める人物像」を示して採用方法を見直すとしており、結局は知事の価値観に合う人材でなければならないということになります。とりわけ、本庁部長の政治的な任用は、行政の政治的中立性や安定性をゆがめ、知事が変わることに伴い、政策の継続性を損なう危険性があります。
また「組織人員体制の見直し」では「一般行政部門職員数の削減」として、平成22年度から26年度の5年間で、21年度当初比900人の職員削減、「ポスト管理」として、部長級・次長級のスリム化、「出先機関の見直し」として、別表のとおり、廃止・統合、あり方検討、独法化の方向を示しています。これらは職員へのさらなる労働強化とともに、府の事業を廃止し、あるいは市町村や民間に丸投げし、府民生活を切り捨てて、広域課題と大企業の競争支援のための道州制に移行させるために大阪府を解体する方向性をさらに明確にしたものです。
府職労は、地方自治体の役割を放棄し、府民と職員へさらなる犠牲を押し付けながら大阪府を解体する「財政構造改革プラン」に断固として反対し、広範な府民との共同をひろげてたたかうものです。