カット中止・賃上げ実施で約300億円の経済波及効果 2000人を超える新たな雇用を生み出す
府職員の賃金を府人勧にもとづいて9800円引き上げ、さらに賃金カットを中止すると、1人当たり平均月額2万9436円の賃上げとなります。この賃上げが大阪経済に波及する効果について、関西大学経済学部の良永康平教授に調査を依頼したところ、1年間で約300億円の経済波及(生産誘発)効果があり、それによって2000人以上の新たな雇用も生まれることが明らかになりました。府労組連は、こうした客観的事実も広くアピールするとともに、職場からのとりくみをいっそう強め、交渉継続となっている「人勧にもとづく賃上げ実施」「賃金カット中止」を何としても実現するために、引き続き奮闘する決意です。
良永教授は「賃金カット後の公民較差(年額)に府職員全体(8万1293人)の総額を求めるとかなりの多額となり、経済波及効果も大きいことが予想される」として「家計調査」や「大阪府産業連関表」を用いて経済波及効果を推計しました。
■第1次波及効果
推計では、賃上げ実施とカットの中止による引き上げ額は、総計で約382億円に達しますが、納税等の非消費的支出や預貯金等もあり、すべてが消費に回るわけではありません。そこで、大阪市の「家計調査」データから過去8年の平均消費性向を求め(70・8%)、この消費比率を当てはめ、約270億円が消費に回るとしています。
次に、これがどのような産業の民間最終消費支出となるかを平成17年「大阪府産業連関表」から産業別に推計しています。海外からの輸入や他府県からの移入によって、消費需要は漏出してしまう可能性もあり、すべて大阪府の生産に繋がるとは限りません。実際に、財貨では府内需要の76・9%(2005年)は他府県及び海外に依存し、サービスでも移輸入率は14・7%であり、全体として32・3%は大阪府以外に漏出しており、大阪の生産誘発には繋がっていません。そこで大阪府の産業別の自給率を民間最終消費支出に乗じることにより、府内に回る民間最終消費需要を産業別に推計しています。これが直接効果であり、合計で約189億円に達しています。この直接効果の生産誘発額のうち126億円は付加価値であり、さらにそのうちの45億円は雇用者の所得となります。
しかも、この直接効果は、さらにその生産を行うための原材料の生産(中間投入・需要)を誘発し、合計で68億円の生産を誘発します。これが間接効果です。このうち41億円は付加価値であり、さらにそのなかの18億円は雇用者所得です。この直接効果と間接効果の合計が第1次の波及効果であり、生産や付加価値、雇用者所得等の誘発とともに、1772名もの就業者を誘発することにもなります。
■第2次波及効果
波及はそれに留まりません。第1次波及効果で増えた雇用者所得が消費の増加を誘発し、それがまた生産を誘発します。これが第2次波及効果です。
第2次波及効果は、さらに雇用者所得の増加→民間最終消費の増加→生産の増加→雇用者所得の増加→民間最終消費の増加といったように無限連鎖的に繋がっていきますが、所得から消費に向かうのは一部である(消費性向)ことや他地域への需要漏出もあり、効果は大幅に減衰していきます。このため通常は所得→消費→生産を1回のみ考慮に入れています。ここでは、第1次波及効果で生まれた63億円の雇用者所得に平均消費性向70・8%を乗じた45億円が民間最終消費となり、さらにそれに自給率を掛けたものが大阪府内の需要となって生産を誘発するとしています。その結果、第2次波及効果として42億円分の生産が誘発され、そのうち26億円は付加価値、10億円は雇用者所得となります。
■全体波及効果
こうして波及効果全体としては、300億円の生産が誘発され、うち雇用者所得が74億円をしめています。また就業者も2045人とかなり多く誘発されることがわかります。最初に府内に回る民間最終消費が270億円と想定していることを考慮するならば、全体としてその1・12倍に当たる生産を誘発することがわかり、効果は大きいということができます。
府労組連は、こうした事実も示し、引き続く交渉で、賃上げ実現・カット中止を求めるとともに「すべての労働者の賃上げで景気回復を」をスローガンに、2014国民春闘と結合したとりくみを旺盛にすすめます。
●憲法・地公法違反、立法事実のない条例は制定するな 府人事委員会も「慎重審議」を要望
松井知事が府議会に提出した「職員の政治的行為の制限に関する条例案」「労使関係における職員団体等との交渉等に関する条例案」について、12月9日、府人事委員会は意見表明し、府議会に「慎重審議」を求めました。
府人事委員会は、これらの条例に対し「職員の政治的自由を不当に制限することにならないことが必要」「職員の団結権、交渉権を制約することがないよう留意されるべき」と指摘するとともに「公務員たる職員についても、政治的自由及び労働基本権が憲法の基本的人権として認められている」と述べています。
さらに、府と職員団体のあり方についても、適正で信頼関係に支えられた労使関係は、職員の勤務意欲の向上や公務能率の増進、府政に対する府民の向上をもたらすと述べ、条例案は「管理運営事項に関する意見交換を禁止したものでないと解する」としています。
府職員に地方公務員法でも一定の制限がされており、府人事委員会も指摘するように、条例によって法律を上回る制限をかけることはできません。必要性のない条例の制定は許されません。
「条例制定するな」の声は全国的に広がり、労働組合・住民団体・法曹界など、204団体から知事あてに抗議・要請が寄せられています。
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