1.
11月28日、大阪府は、府立公衆衛生研究所(以下、公衛研)を大阪市立環境科学研究所と統合し、地方独立行政法人化(以下、独法化)するために、「地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所への職員の引継ぎに関する条例制定」、「大阪府立公衆衛生研究所条例廃止」などの条例案を府議会に提出した。
府民・職員に対し独法化の必要性も説明できず、納得も得られていない状況下で、公衛研の独法化を行うための関係条例等を府議会に提出したことは、府民の健康や安全に対する責任を放棄するものであり、厳しく抗議する。
2.
地方独立行政法人は、住民や地域社会にとって必要な業務のうち、地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のない機関として、公衛研を独法化することは、「大阪府は府民の健康とその安全を守る業務を主体的に行わない」と言っているも同然である。
これまで公衛研が行ってきた衛生行政を支えるデータの蓄積や技術・設備の維持などは公立運営であるからこそできたものである。公衛研を独法化すれば、その場しのぎの効率化や効果を優先することになり、検査の民間委託化が進むことも懸念される。新型インフルエンザや集団食中毒の発生など、府民の健康危機管理にかかわる事件発生時に、検査を実施する体制が維持できなくなるばかりか、大阪府は府内の情報の蓄積ができなくなり、事件の原因を解明する機能の低下は避けられない。
3.
「地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所」の定款では、法人の種別において職員の身分は「非公務員型」とされている。しかし、定款に関する条例は、労働組合との合意がないまま府議会に提出されたものであり、「地方独立行政法人化に当たっては、雇用問題、労働条件について配慮して対応するとともに、関係職員団体又は関係労働組合と十分な意思疎通を行うこと」(2003年6月、地方独立行政法人法が国会で議決された際の附帯決議)にも反している。
府当局は公衛研の独法化関係条例等の府議会提出前の10月28日、「地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所への移行に伴う職員の承継・派遣及び勤務労働条件等について」を府職労に提案した。提案内容は、職員の将来を左右する重大な勤務労働条件であるにもかかわらず、当局は職員や組合員の生活実態を顧みない不誠実な回答、対応に終始した。
また、9月18日に開催された職員への説明会では、「公衛研の独法化の具体的なメリット・デメリットは示せない」と明言し、統合•独法化による具体的な提案理由など説明責任を果たせず、統合研究所の将来ビジョンすら示せない状況となっている。
4.
昨年11月16日に開催された第17回府市統合本部会議で、橋下大阪市長は、「(独法化の)責任者を決めるのが僕らの役目」「中身は何も見てないので分からない」と、職場の実態や公衛研の役割をまったく無視し、独法化の結論と責任のみをトップダウンで押しつけている。公衛研の独法化は、橋下「維新の会」がすすめる「大阪都」構想の具体化として、府市統合を前提に、府民の健康や安全を守るという公衛研の役割や業務内容を無視して進められてきたものであり、断じて認められない。
府職労は、これらの条例等の提出に抗議するとともに、いっそう住民との共同を広げ、公衛研の独法化を許さず、府立直営での機能充実をめざし全力で奮闘する。