「大阪府総務サービス整備運営事業」を2004年度当初の導入に向け、業者の決定を行い、10月からシステム開発に着手していることに対して大阪府職員労働組合として10月11日申し入れを行いました。
この事業は、「内部管理などの間接部門のスリム化とサービスの向上」、「IT関連調達にかかる従来の手法を越えた新たな事業手法の確立」を目的としているが、「大阪府行財政計画(案)」の3000人削減方針の一環として「総務サービスセンター」設置で150人(学校関係含めると350人)の人員削減だけでなく、仕事・自治体のあり方の根本に関わる重大な問題をもっています。
2002年10月11日
大阪府知事 太田 房江 様
大阪府職員労働組合
執行委員長 金治 貞男
総務サービス整備運営事業についての申し入れ
大阪府は、「総務サービス整備運営事業」を2004年度当初の実施に向け、準備をすすめている。本事業は、人事や給与、福利厚生、物品調達といった庁内の基幹的な業務を集中とともに、システム設計から運営までを民間委託をするものである。これは、公務のあり方や自治体行政の根本を問われる重大な問題である。府職労は、「本事業」の導入は反対であることを表明してきた。しかし、府当局は、入札手続を経て、業者を決定し、10月からシステム開発に着手している。
大阪府のすすめる「本事業」は、人員削減や行政の空洞化、労働強化につながるもので、以下のような問題があると考える。
問題の第一は、人員削減と庁内の直接サービスをリストラするという「本事業」の目的である。IT化による効率化を推進することで、人員削減や組織の統廃合、事務事業を縮減し、トータルとして府民サービスの低下、職員の労働条件の悪化をもたらすものである。第二に、従来各部・室・課・所属で行っていた中間経由事務を省力化し、「総務サービスセンター」に集中処理、職員の問い合わせに「コールセンター」で対応するという「本事業」は、総務担当職員の業務と位置づけを軽視しているとともに、職員に対するサービスの低下と総務事務の変質にかかる問題である。また、第三には、職員と府民の個人情報の集中に伴いプライバシー保護が保障されるかどうかが問われる問題である。同時に、「e-ふちょう」は、「住民基本台帳ネットワーク」「総合行政ネットワーク」とも接続することになっており、「総務サービスセンター」に集中される個人情報もまた他に流れる危険性がある。
府職労は、これらの多くの問題をもっている「総務サービス整備運営事業」について、以下の申し入れを行うものである。
1.2004年度導入予定としている「総務サービス整備運営事業」は、総務事務の主要な部分を民間に委託するなど、公務のあり方に関わる問題であることから、行政の空洞化や労働強化、人員削減につながる導入は行わないこと。
2.システム開発に関わって
(1) 「システム開発」については、国との一元化でなく、府としての独立性を維持すること。
(2) 職員や府民等の個人情報については、自己情報の開示、訂正権、アクセス状況の蓄積と本人の開示など、プライバシー保護を徹底すること。
(3) 各システム導入については、1979年の「新財務会計システム」導入時の労使協議を踏まえて、協議を行うこと。
3.導入に当たって
(1) 拙速な導入は行わず、「事業」の十分な検証と試行を行い、職場担当者等の意見を十分聞くこと。
(2) 少なくとも、「事業」に必要なパソコン配置を行い、十分な修練と試行期間を確保すること。
(3) 「事業」の実施にあたっては、制度運用での画一的な標準化や集中化を行わないこと。また、内部(室・課等)でチェック機能とノウハウの蓄積が維持できる体制を確保すること。
4.勤務条件に関わって
(1) 誰でもが簡単に操作できるシステムとすること。
(2) 賃金、労働条件、福利厚生について、職員本人の発生源入力による申請が基本となることから、職員の権利を後退させないこと。
(3) 「総務サービス整備運営事業」推進にあたって、IT推進課、用度課、出納課等の担当者が労働加重とならないよう体制整備すること。
○質問事項
1.人事トータルシステムについて
(1) 職員本人が、死亡、病欠となった場合、誰が変更・訂正するのか?
(2) 入力内容をチェックするのはどこか?
(3) 出向者や非常勤職員を抱えている部・課は、誰が入力するのか?
2.物品調達システムについて
(1) 用度課の役割が、現行とどう変化するのか?
(2) 民間企業に委託することで、「一部企業との関係」を排除できなくなるのではないか?
(3) 「指定用品」を総務サービスセンターから調達することで、時間的ロス・配送経費ロスが生じるのではないか?
(4) 一般物品見積もり合わせシステムで、府下全域を対象とすることから、大企業が有利になり、地元中小企業の排除、広域発送の問題が出るのではないか?
(5) 公募調達(電子調達)になることで、官公庁発注の中小企業優遇策はどうなるのか?
3.行政文書システムについて
(1) 決裁関与者のみの合議になると、その仕事がどのように回っているのかが、他のグループ員にわからなくなる。一斉供覧は、決裁中でも可能なのか?
(2) 決裁中の案件で、いざという時に手続きとしての電子決裁ができていないときの業務処理はどうするのか?
(3) 府知事、部長宛電子文書など室課が、不明なものの処理は、法制文書課で受けて、各室課に送るのか?
(4) 課としての文書管理業務(「受領箱」「メールボックス」)は、誰が管理するのか?「受領箱」等へのアクセスは、可能か?
(5) 職員個人にメール送付された調査依頼などの公文書の取り扱いは、どうなるのか?「受領箱」等へ転送するのか?
(6) 職員個人にきたメールの取り扱いは、文書管理者がシステムで把握するのか?室課単位での文書の状況一覧表の範囲はどこまでか?
(7) 研修対象者が本庁520人というのは、不十分ではないのか?少なくとも希望者全員が受講できるようにすること。
(8) 行政文書の一括データベース化は、情報漏えいや情報破損・消失の危険性が大きいのではないか?
(9) システムの独自性の問題として、LGWAN、電子申請システムとの電子文書交換を想定した形式の電子フォーマットに対応するため、国のシステムとの同一性が必要になるのではないか?